毎晩のように求められて、優しく大切に接してくれる弦さんに、私はいつも困惑していた。

 だって私たちは愛のない政略結婚だったはずでしょ? 家には寄りつかず、会話もないに等しい関係になると思っていた。

 だけど実際は違う。できる限り早く家に帰ってきて、私との時間を過ごしてくれる。休日だってそうだ。
 それにこうして何度も身体を重ね、愛してくれる。

 それは早く後継ぎを作るための行為なのかもしれない。でも、彼に抱かれるたびに感じてしまうの。

 もしかしたら私は、弦さんに愛されているのかもしれないと。

 あり得ない。私が愛されるなんて。じゃあどうしてこんなに優しく私を抱きしめるの?

 戸惑いながらも同時に幸せな気持ちにもなる。
 このままでは私、弦さんのぬくもりに依存してしまいそう。

 ただの気まぐれ? 子供ができたらガラリと変わってしまう? 新婚だから世間体を気にして?

 様々なことを考えても、答えは出ない。結婚してから何度この答えの出ない問題に頭を悩まされているだろうか。

 素直に弦さんの優しさやぬくもりに甘えたいと思いながら、冷たく突き放されたときのことを考えるとそうできない。

 もしそうするつもりなら、最初から愛されていると錯覚するようなことをしないでほしいのに……。

 今夜ももう少しだけ彼のぬくもりに包まれていたいと願ってしまうんだ。

 次第に弦さんの寝息に誘われ、私も瞼を閉じた。

 少しして見た夢は、弦さんに「愛している」と何度も囁かれる幸せなものだった。