「私が黒夜の作品に登場するなんて夢みたい。………私の夢も叶えてくれるなんて、さすが黒夜だね」
 「当たり前だろ」


 姫白の耳元でそう囁き、黒夜は先程よりも強く彼女を抱きしめた。



 月城黒夜の始めての人物画である「紅茶色のリボン」は、発表後にすぐに話題になり、黒夜の代表作になった。

 そして、その絵は小さな本屋の一画に大切に飾られていた。もちろん、隣には紅茶色の桜並木の絵をある。


 これからも、苦しみ悩む事は多いだろう。
 けれど、姫白とならば笑顔で生きていける。

 彼女を笑顔にするためには、自分が笑っていないといけないのだと、黒夜はわかった。

 そのためには、この2人の生き方はきっと正解だったのだろう。
 そう黒夜は思うようになったのだった。


 「また紅茶色の銀杏の木を描きたくなったな」と呟くと、姫白も「それはいい考えだね」と微笑んだ。
 次のデートの場所も決まった。
 
 2人の瞳には、綺麗な紅茶色の景色が浮かんできたのだった。


 そして、結婚して子どもが生まれたら、あの意地悪でかっこいい男の話をしてあげようと思った。
 桜並木にいる銀色の桜門という、俺達の恋のキューピットを。そんな事を聞いたら、あいつは怒るだろうな、と黒尾は一人ひっそりと微笑んでしまったのだった。