黒夜は自分の右腕を見つめた。
 そして、その腕が少し震えているのがわかった。

 「身代わりになったら、またあの激痛を味わうか。そして、絵が描けなくなるのか……それな心の何処かで怖かった。……姫白を助ける事が1番なのに。大切で守りたいのに……どこかで怖がってた。だから、桜門には見破られたんだ。こいつは、怖がってるって」
 「黒夜………」
 「意気地のない弱い男でごめん………。でも、俺はお前を守りたかったんだ。だから、それだけは……っっ……」


 黒夜は途中で謝罪の言葉を止めた。
 それは、姫白が彼に抱きついたからだった。左腕だけを彼の肩に掛け、そのまま体を彼に預けた。咄嗟に黒夜は支えてくれたが、それがなかったからきっとそのままベットから落ちてしまっていただろう。
 
 そして、思わずクスクスと笑ってしまう。
 そんな姫白を見て黒夜はギョッとしたあと、抗議の声を上げた。

 「お、おまえな……ここは笑うところじゃないだろ。俺がどんなつもりで話したと……」
 「わかってるよ。わかってる……いつも守ってくれてるのは、あなただから。だから、あの事故の日も、あなたが先に守ってくれたんでしょ?恐怖よりも、私を車から守ってくれた。そして、大怪我をしたんだから。だから、黒夜が守ってくれたってわかってる。それに、あの大怪我を負って痛みを知ってしまったら、恐怖を感じるのは当たり前だよ」
 「それはっ………でも、結局はお前に助けられた」
 「いつもあなたが守ってくれたお礼だよ。………それに、私はあなたがずっと好きだったの。あなたの絵も、声も、表情も……私と笑いあってくれる黒夜が好きだった。だから、守りたかったんだよ」


 あぁ、ついに伝えてしまった。
 ついに長い秘密の片想いは終わりを告げた。

 結果がどうなってしまうかなんて、わからない。
 けれど、彼に思いを伝えられたのだからよかった。
 ずっと言えないと思っていた、自分の気持ちを伝えられたのだから。