16話「紅茶色の」



 久しぶりの外出は体力的にギリギリだったようで、病院に戻り着替え終わると昼食も食べずに寝てしまっていた。
 傷の痛さや環境の変化、そして気持ちの不安定さからなかなか熟睡出来る日はなかった。けれど、この時だけはとても安心して寝れる事が出来た。
 運動は必要だったのか。それもあるだろうが、ずっと見たかった彼の絵を見ることが出来て心が満たされたからだろう。姫白はそんな風に思った。


 「ん………。夕方……?寝過ぎちゃったかな……」


 目を開けると窓から夕日が差し込んでいた。
 3時間ほど寝てしまっていたようだ。
 姫白は目を擦りながら、ゆっくりと体を起こそうとした時だった。


 「おはよう」
 「え………黒夜………?」


 優しい声が静かな病室に響く。
 その声だけで、誰のものなのかすぐにわかった。姫白が声の方を向くと、そこには椅子に座って微笑む、黒夜の姿があった。スーツにロングコートという姿でこちらを向いてぎこちなく微笑んでいた。


 「……なんで、黒夜が……?」
 「絵、届けるって伝えて貰っただろう」
 「だからって、その日に来るなんて!それにずっとずっと寝ているときしか会いに来てくれなかったのに……」 
 「………ごめん」
 「………」