フッと題名が気になり、絵の横を見るがそこには何も書かれてはいなかった。そして、成約済みの紙さえも貼られていない。
 だが、この作品はSNSでも人気の作品だ。売れないわけがない。姫白は不思議で仕方がなかった。


 「その銀杏並木、気に入っていただけましたか?」
 「え……あ、はい」


 長い間この絵の前に立っていたのだろうか。いつの間にか黒いスーツに身を包んだ女性スタッフがニコやかに声をかけてきた。姫白は、不安定になっていた心を落ち着かせながら、何とか笑顔で返事をした。


 「作者の月城もこの絵が1番気に入っているそうで……。なので、この絵を売るのに迷っているようなのです」
 「そ、そうなのですね。だから、成約されてないのですか」
 「そうです」
 「………この絵には作者からのクイズがありまして、それに正解した人にプレゼントすると言っているのです」
 「クイズ、ですか?」


 驚きながらも、内心「彼らしいな」と思ってしまう。けれど、そのクイズとやらはとても気になった。正解したらこの絵が貰えるとなると、どうしても正解したくなる。
 けれど、この絵を自分が貰ったのならば、彼はどう思うのだろうか。そんな風に思って、心が少しずつ曇っていく。
 それに今まで誰も当たらないクイズだったのだ。彼は到底難しいクイズを出題しているのだろう。自分が当たるはずもない。
 そう思い、スタッフの言葉を待った。


 「それでは、こちらの絵についてクイズです。この銀杏並木は何色でしょうか?」
 「…………ぇ…………」