目的の場所は桜門が知っていた。彼の案内を危機ながら向かうと、そこには個人病室があった。
 コンコンッと扉を叩くと、小さな声で「どうぞ」という声が室内から聞こえてきた。


 「失礼します。初めまして、ではないのですが……」


 文月がゆっくりと中に入ると、ほっそりとした小顔の女性が、ベットに体を横にしたままこちらを見つめていた。
 とても不思議そうな顔をして文月を見つめた後、視線が文月の後方へと向いた。その瞬間、瞳を見開いて驚いた表情を見せたのだ。


 「あなたはあの時の……。夢ではないと思っていたけど、本当の事だったのね」
 「夢ではない。まぁ、似たような存在かもしれないがね」


 そう言うと、桜門は彼女の方へと近づき、ベットの横にあった椅子に優雅に腰をかけた。文月もその隣の椅子に座る前に、自己紹介をした。


 「初めまして、綴文月と言います。こちらは死人の桜門」
 「綴さん……。あなたは生きている、のよね?」
 「はい。わけあって、桜門さんの手伝いをしてまして」
 「俺の助手だ。それで、おまえは篝(かがり)姫白だな」
 「はい」