文月は、バックから携帯用のイヤホンマイクを取り出して、耳につけた。手にはスマホを持ち、耳にイヤホンマイクをつけていれば、電話をしていると思われるだろう。
 桜門の方ばかりは見れないが、仕方がない。
 「人間は面倒だな」と苦笑する桜門に「仕方がないですよ」と返事をしながら、2人は無事に街を歩くことが出来た。(桜門は宙に浮いているが)
 

 「この街……人形多くないか?」
 「人形……あぁ。AIドールね。アンドロイド」
 「そう。そのあんど……なんとかってやつ。人間そっくりだな」


 ちょうど2人がすれ違った男性の隣には外人風の女性型アンドロイドがゆっくりと歩いていた。よく見れば人形だとわかるが、遠くから歩いてくる姿は人間そのものだった。人工知能も発達しており日常会話には全く問題がないほどに、ロボットは成長していた。


 「このアンドロイドを作っている会社がこの街にあるから、試験的にアンドロイドを生活させているの。他の街では、こんなに沢山のアンドロイド達を見ることないと思いますよ。というか、桜門さんはあの場所から出ることはあるんですね」


 あの場所にしか行けないと思っていたので、文月は少し驚きながらも、依頼主のことを調べているという話も聞いていたので、納得もしていた。

 
 「あぁ。まぁ、ほとんどの依頼主には来てもらうけどな。会えない奴には会いに行くしかないだろう」
 「おばあちゃんの時もそうだったんですか?」
 「みき子か。みき子は自分の弱った顔を見られたくないと言っていたからな。行ってない。だから、手紙を貰っていた」
 「そうだったんですね」


 知らなかった祖母の話を聞いて、文月はおばあちゃんらしいな、と思った。
 文月と桜門が話ながら街を歩いていくうちに、大きな総合病院に到着した。