12話「いつも同じ笑顔」





   ☆☆☆



 事故から1週間が経った。
 文月は、そろそろ実家に両親が帰ってくる頃でもあったので、自分の家へと戻っていた。
 桜門に会うための城門は、実家と文月の家のちょうど真ん中ぐらいの距離の場所にあったので、不便とは感じなかった。もし、遠くなっていたとしても、彼の元へ訪れることを止めるはずはないのだけれど。
 

 「ここら辺はすごいな。休みの日なのにこんなに人がいるのか」
 「…………」
 「病院までは歩きなのか?」
 「…………」
 「寒くはないか?」
 「…………」
 「おまえ、何故無視する」
 「………今、桜門と喋ったら絶対に不審がられるわ」
 「視える奴は視えてるから大丈夫だと思うぞ」
 「ほとんどの人が見えてないの!」


 コソコソと話をしていたが、最後は大声を出してしまい、周りを歩いている人に不審がられてしまう。文月を見てヒソヒソと何かを言っている人までいる。恥ずかしい。早くこの場所から離れようと、早足で立ち去る。

 訪れているのは大きな駅がある街だった。
 隣に居る派手な男が言う通り、昼間でも人の往来が激しい。文月はそんな中を2人で歩いていた。だが、その相手は死人なのでほとんどの人間には見えていないのだ。死人、桜門はいろいろと話し掛けてくるがそれに答えていてはかなりの不審人物だ。独り言を言って歩いている人になってしまうのだから。


 「あ、良いこと思い付いた!」