10話「悲劇の前の再会」


 

 ※※※


 「行きたいなぁー………」

 仕事を終え、自宅の部屋でゆったりとしていた。夕食とお風呂もすませて、ベットでスマホをチェックしていた。
 最近、ずっと悩んでいる事があった。
 スマホの画面には、『黒夜 水彩画個展』と表示されておりその文字のバックには彼が描いた湖の絵が載っている。透明感があり、まるで写真のように精巧な描写。それが人気になり、黒夜(くろや)という姫白(きしろ)と同年齢の男は有名になっていた。

 そして、その男こそが姫白が好きな相手。
 もう何年も片想いをし続けている相手だった。

 そんな彼が開催する個展がもう少しでスタートするのだ。知人として行ってもいいのだろうが、彼に会うのは気まずかった。
 そんな事からチケットを買うか迷う日々が続いていたのだ。


 しかし、後日に思いもよらない事が起きた。
 その個展より前に行われる同窓会で、姫白は黒夜に再会したのだ。
 有名になり雑誌やテレビにも出るようになっていた彼の活躍を知っていたので、まさか同窓会に参加するとは思っていなかった。もちろん、少しは期待していたが、まさか一目会えると思っていなかったのだ。
 だが、もちろん彼は同窓会でも人気者で、すぐに人が集まってきた。
 自分から会いは行けない。姫白は、彼に負い目があったのだ。遠くから見ているだけで十分だ。そう思っていた。