「また、何かお礼をする」
 「え、そんな……いいですよ」
 「じゃあ、今度は俺が食べさせてやる」
 「本当にいいですって!」
 「恥ずかしがるな。食べさせてもらうというのも、恋人のようで楽しいではないか。こういうのをデートというのだろ?」
 「なっ!!」


 思いもよらない言葉が続き、文月はどう返事をしていいのかわからなくなってしまう。文月が1番知らない事なのだから。


 「なんで、そんな事を知っているんですか?」
 「依頼主が教えてくれた。時々遊びに来るやつがいてな。恋しい人がいると、とても幸せだと言っていた」
 「……そうですか」
 「俺は恋人というものがいた事がないからな。文月は恋する人がいるのか?」
 「え!?したことがないって………」


 問い掛けられた事よりも、文月は桜門の先の言葉が気になり思わず聞き返してしまった。
 こんなにも綺麗な人に恋人がいない。そんな事信じられるはずがなかった。どんな人でも、桜門が近寄れば、きっと恋に落ちるだろう。
 それなのに、何故と思ってしまったのだ。
 勢いよく話してしまったせいか、桜門は驚いた様子だったが、すぐにいつもの笑みに変わる。


 「俺が死んだのは、大人になる前だからな。今は望んだ年齢の体型になっているが………」


 桜門が、そう続けて話そうとした時だった。



 チリリリリリリッ