「私はあんなに綺麗な笑顔じゃないと思うけどな……」


 桜門の笑顔はとても整っており、美しいと感じられるものだった。
 そう、綺麗すぎる、のだ。
 ずっと笑みを浮かべている桜門の笑顔は、綺麗すぎて少し怖いとも思えてしまう。
 けれど、話の中でフッとせる無防備の微笑みは少年のように幼くも見えるのだ。

 
 「どんな人だったんだろう?」


 そう独り言を洩らした時だった。
 

 ブーブーブー


 スマホの振動音が部屋に響いた。
 文月は慌てて、パーカーのポケットに入れたままになっていたスマホを取り出す。スマホまでホカホカになっている。

 手に取った時にはバイブは終わっていた。どうやら電話ではなくメッセージだったようだ。
 画面を確認すると、そこには「桜門」の表示。アイコンはあの桜並木の景色になっていた。
 そこをタップすると、桜門からのメッセージが表示される。