そこには、大分呼吸が出来なくなり、苦しくなってきた事。余命宣告が文月と同じ期間を医者に伝えられた事。こんなにも苦しい病気と何年も戦っていた文月の頑張りを褒めてあげたい……そんな風に書かれていた。
 けれど、長い手紙で1番多く書かれていたのは、元気になった文月の生き生きとした様子だった。そんな姿を自分が生きている間に見られた事がとても嬉しいかったようだ。
 それを読んでは、桜門は切なさも感じつつも、これでよかったのだ。そう感じられた。

 そして、最後にはこう書いてあった。


 『孫の文月は、桜門様にぴったりだと思いますが、いかがですか?とても明るくて優しくて、可愛い孫です。桜門様の優しさと同じぐらいに。何か、あなた様と文月は同じ雰囲気を感じるのです。……そして、きっといつか桜門様に文月は会いに来ると思います。だから、その時はどうぞよろしくお願い致します。そして、仲良くしてあげてくださいね』


 このように書かれていた。


 「……みき子は本当に変わり者だな」


 大切で自分の命と引き換えに守った孫を、死人である桜門に勧めるのだから、酔狂な事だと桜門は思い、一人笑ってしまう。


 「みき子が言っていたことは当たったな」


 桜門がいる空間は暖かいとはいえど、今は冬。このまま寝てしまっては文月は風をひいてしまう。この死人だけの空間にいればそんな事はないと思いつつも、桜門はそろそろ起こそうと思った。
 けれど、スヤスヤと自分に見せる寝顔が見れなくなるのが惜しくもあり、もう少しだけ……と、彼女の姿を見つめ、穏やかな時間を過ごしたのだった。