「笑った顔………やっぱり、似てるな」


 桜門は文月の笑みを、ジッと見つめた後、しみじみとした調子でそう言った。
 それはどこか嬉しそうで、懐かしいものを思い出すような遠い瞳をしていた。


 「おばあちゃんにですか?よく似てるって言われます」
 「………あぁ、そうだな」


 桜門は、苦笑いをしながらも「文月はみき子によく似ているよ」と、繰り返した。
 彼は、何かを言いたそうにしつつも、その言葉を飲み込んだように思えた。


 「それで、その募金の金だ。それを、おまえの両親は治療に使わずに自分のお金として使った。そうじゃなきゃ、おまえの手術の日に海外に旅行に行ったりは出来ないはずだな」
 「そんな事まで知っているんですね」
 「死人だってそれぐらい調べればわかる」


 知られたくない事を話されているはずなのに、何故か気持ちが重くなる事がなかったのは、先程桜門が笑わせてくれたからなのだろう。落ち着いて彼の話しを聞くことが出来た。

 「治療が上手くいかない、またお金がかかるなら支援してください、とお金を集め、実行せずにまたお金を使い込む。その間、文月が苦しんで古い治療法しか試せてないのを知らずに、金だけが減っていく」
 「…………」
 「で、医者とも結託をして、文月の状態を支援者に嘘の報告をしていた」
 「え………お医者様も……?」