「どうして、そんな酷い願い事を叶えたんですか?祖母は苦しんだのですよ!?私は若いからまだよかった。けど……体力のない祖母はすぐに死んでしまったじゃないですか!?」
 「………文月の苦しみを知りたい、というの願いだったのだ」
 「だからって!そんな願い事勝手に叶えないで!!」
 「………もう1つの願い事もあった」
 「………え?………」


 怒っているのに、何故桜門という男は笑顔のままなのだろう。それが文月をまた新しい怒りを生み出しているというのに。
 もう1つの願い事なんて知らない。それを知ったとしても祖母が死んだ事には変わりはない。
 そう、言い捨ててやろうと思った。


 「文月に、家族の愛を知って欲しかった」
 「……ぇ………何を言って………」


 思いもよらない言葉に、文月の動きが止まる。桜門は、文月の方へと手を伸ばした。


 「おまえ、両親に利用されてたな?」


 笑みでそういう桜門の言葉。
 優しい視線と口調だった故に、更に残酷さを感じざるおえなかった。