次に気付いた時は、真っ暗な城門前だった。
 桜門に会いに文月が訪れた出会いの場所。

 死んだというのに、真っ暗な場所はどこか怖く感じてしまい、文月は茫然と歩き始めた。
 いろいろ考えなければいけない。桜門の言葉をよく思い出して整理しなければいけない。
 そのはずなのに、混乱から文月の頭は考えるのを辞めてしまっていた。


 身代わりの依頼がくるまで町を歩きながら考えよう。
 そう思って、明るい街へと足を向けた。

 しばらく歩いていると、「ぐーー」と自分のお腹から音が聞こえた。死人でも空腹を感じるのだろうか。桜門も甘い物を食べていたし、そういうものなのかもしれない。
 文月は、空腹を満たすために真夜中でもやっているファストフード店へと入った。


 「いらっしゃいませ」
 「このハンバーガーのラージサイズを3つください」
 「かりこまりました。持ち帰りでよろしいですか?」
 「はい」


 夜中にも関わらず、若い店員は笑顔で文月の淡々とした注文を聞いてくれる。
 文月は、気づかないふりなどできなかった。