「私はいただいたものなんだけど、お花の香りがするものなの。いい香りでしょ?」
 「初芽の匂いだ」


 海里の言葉を聞いて、一瞬だけ初芽の手が止まった。
 何か変な事を言ってしまっただろうか。
 そう思ったが、次に聞こえてきた彼女の声は、とても嬉しそうなものだった。


 「そうね。………そうかもしれないわね」


 表情は見えない。けれど、初音は笑っている、とすぐにわかった。











 「本当に綺麗。透けているみたいね。ほら、鏡を見て」
 

 丁寧に洗った髪を、ふわふわとした布で拭いてくれる。
 まだ少し水っぽい髪に触れた初芽は、感嘆の声を上げてそう言った。
 自分ではさっぱりわからない。不幸の元凶である銀髪の髪。褒められる理由などないはずだ。
 けれど、彼女の部屋にあった化粧台の鏡に連れてこられて、唖然としてしまう。目の前には、キラキラと光る髪で驚いた表情でこちらを見ている少年がこちらを見ていたのだ。