海里は焦って声を荒げてしまう。
彼女の悪く思われるのは嫌だと思ってしまったのだ。どうして、そんな風に思ってしまったのか、その時の海里にはわからなかったが、もう言葉に出してしまったのだから仕方がない。
不思議そうな表情で海里を見つめる初芽は、海里の言葉を待っているのだろう。
こうなってしまったら、誤魔化す術を海里は知らなかった。まだ子どもなのだから。
「………俺の髪は不吉の象徴だって言われてるんだ。災いを起こすってよく言われる。だから、この髪があるかぎり誰も近づいてもくれない。仕事なんて貰えるはずないんだ」
海里は、ここに来る時には毎回ボロボロの布を頭に巻いていた。それで銀色の髪を隠していたからだ。けれど全てが隠れているわけではないので、きっと初芽は海里の髪色は気づいていたはずだ。
だが、海里はあえて彼女の目の前で布をその布を外した。少し長くなるたびに自分で適当に切ってしまうのでバラバラの長さの髪。風呂には入れないので、冬は冷たい川の水で時々髪を洗う程度。お世辞にも綺麗とは言えない銀の髪。海里は視線をそらしたまま、無言で自分の髪を見せるが、内心は恥ずかしくて仕方がなかった。
どうして自分だけがこんな髪なのか。目立つ色なのか。何度も考えた。坊主にしてもらえば目立たないのかもしれないが、自分では短く切ることは出来ない。そんなお金さえもない。



