28話「自分だけの特別」




 人間は冷酷だ。
 冷たくて、怖い。
 それを海里に身をもって教えたのは人間だ。



 人間は温かい。
 それを教えてくれたのは、紛れもなく人間。初芽という姉のような女だ。
 自分にも優しくて熱のある視線を向けてくれる人がいる。
 それが海里に幸福感を感じさせてくれた。



 初めて会った日以降、海里は2.3日に1度ほど初芽の屋敷に忍びこんだ。初めの内は豪華な飯を食べるのが目的だったが、途中から違うことに気づいた。
 彼女との時間が楽しかった。友達という存在は今までいなかった海里にとって、それはとても刺激的で心地いいものだった。


 「海里は、どうしてそんなに怪我が多いの?初めて会ったときだって頬が腫れていたし、今日も足が擦りきれている。ケンカをしているのかしら?」
 「………ケンカじゃないよ。俺が悪いことをするから大人が怒るんだ」
 「海里が悪いことをするの?」
 「…………俺は親もいないし、仕事もないから飯が食えない。だから、畑から盗んだりしてる…………」