「………ツボミ、人間は人の事をよく見ているし、ちょっとした視線やしぐさ、声音などで相手がどんな気持ちかを察することが出来る。けれど、それはあくまで「予想」でしかないんだ。相手が本当はどういう気持ちなのかはその本人しかわからない。だから、俺はツボミが何か悩んでいることはわかるが、それが何が原因かはわからない。言葉にしないと相手に伝わらないこともある、人間がよく言う言葉だよ。だから、教えてくれないか?」
 「私は人間ではないので、悩む事はありません。あるとしても、どちらは最適かを選択する時に同じぐらいの確率の場合のみです」
 「ツボミ………」
 「そのはずなのですが、何故か変な事を考えてしまうのです。これはエラーです。今日のメンテナンスで、何かおかしな所は見つかりませんでした?」
 「エラーは何もないよ。だから、ツボミがおかしいと思う事を教えてくれないか」


 裸のままのツボミは、着ていた洋服で胸元を押さえながら、くるりとこちらを向いた。
 裸を人に見せるのはだめだ、と白銀が教えた事をしっかりと守っている。そんなツボミの表情は、人工眉を下げて、口元はへの字になり切なさが伺えた。
 それは、人より人らしい気持ちを隠そうとしない純粋な「困惑」の表情だ。ツボミが初めて見せる表情に、白銀は思わずドキッとしてしまう。
 けれど、ツボミは真剣に視線で白銀を見つめている。ここで動揺してしまっては、彼女が悩みを話してくれなくなってしまいそうで、白銀はグッと気持ちを抑え込んだ。