22話「冷笑」



 病院から自宅に戻る頃には、もう夜になっていた。
 あまりに疲れてしまった文月は電車を乗り継ぐ気力もなかったし、早く話したい事があったのでタクシーに乗って自宅に帰った。
 

 「桜門さん。いるんですよね?」
 「…………気づいてたのか。俺の気配を感じられるなんて、成長したな。助手」
 「気配なんてわかりませんよ。ただ、居てくれるような気がしたんです」


 独り言で終わってしまう言葉に返事をしてくれた桜門は、桜の花びらを舞い散らせながら霧の中からうっすらと出てくるように姿を現した。ちゃっかりと文月のベットに座っている所が彼らしい。が、今は和むような話をするつもりは、文月にはなかった。


 「桜門さん。白銀さんの話を聞かせてくれませんか?」
 「聞いてどうするつもりだ」
 「聞きたいんです。桜門さんに身代わりの依頼をする前に。自分でしっかりと白銀さんの事を知りたいんです」
 「話したとしても、身代わりの依頼を受けることはないぞ」
 「それでも。……お願いします」