21話「生きる涙」
あぁ………やはりそうか。
文月は、そう思って目を伏せてしまう。
桜門に助けて貰おうと集う人は、命や体を失おうとしてしまう人たちが多いのだ。
彼はそれを一人で身代わりの選別をし、過ごしてきた。そして、何度別れを繰り返してきたのだろうか。
考えてはいけない事なのかもしれない。
他人の気持ちを勝手に想像して勝手に悲しくなるなど、身勝手なのはわかっている。
けれど、そう桜門の事ばかり考えてしまうのだから仕方がないだろう。
そして、目の前の白銀も、この桜並木を訪れた時から文月はすぐにわかってしまった。
彼は重い病に冒されているのだと。
文月は昔、病院で彼のような人たちを沢山見てきた。見送ってきたと言ってもいいかもしれない。病魔に体を蝕まれ、体は細くなっていき、肌の色も変わってくる。特に違いを感じるのは瞳だった。瞳の光りが少なくなるのだ。
それを白銀に感じたのだ。
この人は重い病気になり、もう残りの命が少ないのだと。
「そんな状態でよく病院を抜けてこられたな」
「最後に会いたい人がいるといって、薬を多く投与してもらった。そして、人目を盗んで脱走したんだ」
「それが俺だと。最後に会いたいのは別にいるだろ」
「いるさ。けど、会いたい奴を守るためにはここにくる必要があったんだ」
先程から豪快に笑っているように見えるが、白銀の目は虚ろで、時々表情が陰る事があった。持っているお猪口も、少し震えているように見える。