政府が下した「地球解放宣言」により人工衛星から投下される核爆弾で人類が消滅するその地球最後の日、人間の自由は滑稽で笑えた。

 愛する者と殺される前に心中する者、天寿を全うする者、犯罪に挑む者。ほぼ治外法権と化した世界でおれは初めから電車に乗り込むことを決めていた。

 地球が終わる最後の日、どうせ世界はいつも通り回らないし公共交通機関が果たして意味を持たないことを、おれは知っていたからだ。












「お」


 と思ったのに秒で人と出くわした。

 
 乗り込んだ電車の入り口、そこで腕を組んで立っていた男の前をすり抜けて自分は座席に座る。

 制服姿に、腕を組んで立っているその男。

 おいマジか。世界終焉のその日、せっかくならこの列車の中で爆発に巻き込まれて一人細々と四散する予定が秒でパーになったんだが。え、降りる? 降りようかな。

 座席からズレて逆側の扉から出ようとしたらガー、と扉が閉まり、白目を剥く。ちくしょう、これが無人列車の欠点か。