「家族っていっても人間関係だからな。うまくいく、いかないはもちろんあるさ。」
腕を組んで横目で俺を見ながら優しく言う。
「でもお母さんは、好き、大好き、愛してるっていう感情が消えたら最後に残るのは尊敬しかないんじゃないかなって思うよ。」
「そうだな。例え嫌になって、もう離婚ってなっても…一つでも、“やっぱりこの人を選んで間違いじゃなかった”って思えることが大切なんじゃないかと父さんは思うよ。」
母さんも父さんも、言葉を丁寧に選んでわかりやすく伝えてくれる。
俺にとって家族という当たり前の存在を考えることはとても難しい。
でも、2人は知っているんだ。
家族というものを。
「…そっか。」
「もちろん、お父さんが嫌いとかじゃもちろんないわよ?心から愛してるわ。でもそんな言葉は長年ずっと一緒にいるのが答えなわけだしね。」
そう言って俺に微笑む母さんはすごく綺麗で、いつも以上に父さんを想う気持ちが伝わってきた。
「ふふっ。」
いや顔緩みすぎだろ。
俺に父さんへの気持ちを暴露する母さんを見て思わず笑みをこぼした父さんの顔は、緩みすぎていて思わず心の中でツッコんでしまう。
