「じゃあな。」

あれからなんとなく沈黙が続き、あっという間に堀田が住んでいるマンションに着いてしまった。


「…今日はありがとうね。また明日。」


「おう。」


別れの挨拶を交わすものの、まだなんとなく離れ難い雰囲気を察して、俺が堀田の頭を撫でようとしたその時





「千星?」


「春日!」


声の主は春日だったらしく、堀田はサッと春日の方に向かって行った。

俺はさっきまで堀田の頭を撫でようとしてた行き場のない手を、咄嗟に何事もなかったかのように隠した。


「よう、春日。」

「随分遅くまで残っていたんだね。」

「…あ、うん。春日は?」

「僕はちょっとコンビニに。…なるほどね。」


俺の曖昧な返事に全てを悟ったであろう春日。



「今日は安心して眠れそうなんじゃない?」

「うん!月斗のおかげ!」

「っ…」


そう堂々と言われて俺は柄にもなく照れてしまった。


「さすが、月斗だね。」

「意外とね、人のこと見てるから。」

二人してなぜかニヤニヤして俺をおちょくってくる。堀田なんて、さっきのションボリした姿とは裏腹に春日と一緒に悪ノリ状態だ。


「ったく、俺帰るからな。」


こういうところは本当にそっくりだなと呆れながら2人に背を向けながら片手を挙げて手を振った。


「またね、月斗。」

「じゃあね!月斗!」













少し歩いたところでなんとなく後ろを振り返ると、まだ二人はマンションに入っていなかった。

すると春日は堀田の頭をそっと撫でて二人で笑い合っていた。











その光景になぜかいてもたってもいられなくてすぐに前を向いて走り出す。





「はぁ、はっ」



なんか、苦しい。


モヤモヤする。




だんだんと駅に近づいて走るスピードを落としていって、少し止まって息を整える。







まだ整わない呼吸の中、ふと空を見上げた。































「…今日は本当に月が綺麗だ。」