「絆創膏ね。渡しそびれちゃったわ、はい。」

俺が不用意に顔を出してしまったため、少し申し訳なかった。

「…あ、ありがとうございます。」

絆創膏を受け取ったものの、さすがに教室に戻ることができない。

たしかに、堀田は泣き虫なところがあるっちゃある。でもそれは、体育祭に負けて悔しかったとか感動して泣いたとかそういうことで。辛くて泣いているところはあまり見たことがなかった。




「…先生、堀田どうしたんすか?」




ずっと伏せながら泣いている堀田は俺のことに気がついておらず、こっそりと先生に質問する。

「それがね、わからないのよ…。保健室に来て、少し休みたいですって言われてベッドにするか聞いたのだけれど……座りたいからってここにこんな感じでずっといるのよね…。」



先生も原因はわかっておらず、随分心配しているようだった。




「私が質問しても、何でもないですって言うもんだから、こう言う時は大人しくしていた方がいいからね。とりあえず、見守ってるっていう感じ。」



その話を聞いて納得がいかず、俺は静かに堀田の隣に座って声をかけた。




「…堀田、どうした?」

「………つき、と?」

相変わらず、顔は伏せたままだが堀田は振り絞る声で俺の名前を呼んだ。

「うん。怪我して、保健室行くついでにお前の様子見てこいって梅に言われた。」

「……なんでもないから。」


「お前がそんなに泣いてんのに、理由がないわけないだろ。」

「お願い、戻ってっ。」

そう強めに言われ、今は無理だなと思い席を立ち上がる。




「とりあえず、戻ります。絆創膏ありがとうございました。あとはよろしくお願いします。」



先生に一言声をかけ、保健室を後にした。