夜空を見上げて、君を想う。


「はぁ、はぁ…」

「…っはあ」



二人してただひたすら走っていたらいつの間にか学校の最寄駅に着いていたみたいだった。


水泳部に入っている堀田にとっては序の口だろうが、堀田の手を引きながらダッシュした上に中学一年生から文学部の俺にとっては辛いものがあった。




















「……綺麗。」






堀田の呟きとともに、俺も夜空を見上げた。




そこには暗い夜空には似合わない、綺麗な光を帯びている堂々と丸い満月があった。




「…すごい光ってるな。」




その満月は俺が見たこともないくらい光っていて、まるで心に明かりが灯るような温かい気持ちになる、そんな錯覚さえも思えるくらい綺麗だった。



正直、俺は走るのに夢中になりすぎて空を見る余裕なんてなかったため堀田が何も言わなかったら疲れた体に集中していただろう。






それにしても、キャンパスに描きたいくらいの満月だった。

黄色は必要不可欠だ。
光を表現するために白も必要かもしれない。
それから、この暗い夜空は何色が良いだろうか。












































「私ね」


どの色を絵に使えばいいかを頭で試作していた時、夜空を見上げたまま堀田が話し始めた。



俺は考え事をやめて視線を堀田に移し、まだ続くであろう言葉を黙って待つ。

















































「自分が嫌い。」


















時間が、止まった気がした。