「…………もう大丈夫。本当にごめん、帰ろう。」
10分くらい経ったのだろうか、急に早口で言葉を並べて早足で職員室へと向かおうとする堀田。
俺は咄嗟にその腕を掴む。
「待て。」
「………先生に怒られちゃうよ。」
別にお前気にしてないだろ。
そんなことより、
「涙。」
まだ頬を伝っている堀田の涙を親指で拭う。
「………そんなに俺のこと嫌か。」
「っ、それは違う!」
思わず否定してくれた堀田に不覚にも少し安堵した。
しかし、俺の前で泣いてもなお何も話そうとせずに沈黙が続く廊下。
ここで1人にして俺だけが職員室に行くのも気が引ける。
「……とりあえずさ、もう帰ろう。送る。」
堀田はうんともすんとも言わなくなり、歩き出す様子もなかったため仕方がないから手を引いて職員室に向かう。
「私、お手洗い行ってくる。」
もう職員室に着くというところで、堀田が急にそう言い俺の手をスッと離した。
「え、おい…」
トイレは職員室のそばにある階段を降りたらすぐにあるため、職員室に行ったらすぐに向かえばいいかと思い別行動をとる。
先生には今の姿を見られたくないのだろう。
ガラッ
今日だけでこの扉を何回開けただろうか。
ちょっと数えてみたくなったがまずは有馬じいちゃんに報告だ。
「有馬じいちゃん、終わったよ。」
「おー、今様子を見に行こうと思ってたところじゃ。お疲れさん。」
「うん。」
「堀田さんはどうしたのかね。」
「えーと、トイレ行くって。」
「そうかい。ほれ、これはご褒美じゃよ。たくさん頑張ってくれたからのう。」
「まじ?あざす。」
ご褒美といってくれたのは、飲み物だった。
もとはと言えば俺たちが悪いのに…と思いつつも有馬じいちゃんの厚意に甘えてホットココアとホットミルクティーをもらった。
「それじゃ、気をつけて帰るじゃぞ。」
「はいよ。」
