「…………どういうこと。」
堀田も自分の作業をピタリと辞めて俺の方をしっかり見て問う。
もう後戻りはできない、この際言ってしまおうと思った。
「堀田がどんな悩みを抱えて、自分のことをどう思っているのか。」
何言ってんだこいつという顔で見てくる堀田。若干イライラしている様子も窺える。
「悩みなんて、みんなあるに決まってるじゃん。私が自分のことどう思ってるかなんてそんなのどうでもよくない?そんなに気になること?」
俺はお前を助けたい、お前が俺を助けてくれたように。
そう言えたら、どんなに楽か。
でも、そんな簡単に言えるわけがなかった。
当の本人は覚えていないし、今はそんな話をしている場合じゃない。
「…わからない。わかっているのは、お前を知りたいってことだけだ。」
「私のこと知っても大したことないよ。」
自嘲気味に、そして面倒くさそうに言う。
それでも俺はめげずに会話を続けた。
「でもお前は辛そうだ。夏休み明けてからずっと。」
なんで、という顔で俺を見る堀田。
どうやら俺の勘は当たっていたらしい。
「………2日前、保健室で泣いてるの見た前から思ってたよ。」
「……すごいね。気持ち悪いくらい。」
堀田は、少し目に涙を溜めながら俯いてそう呟いた。
そこで会話は終わってしまい、そのまま無言の時間が進んだ。
やることリストを終えて時計を見たら19時を迎えようとしていた。
