「失礼しまーす。有馬じいちゃん、ラミネートの枚数全然足りないんだけど…。」
急用の時に先生が職員室の扉の目の前に座ってくれていると本当に助かる。扉を開けてそのまま声をかければいいだけだから。
「あれま、本当かい。」
「うん。」
そう言われた有馬じいちゃんは困った顔になり、こう言った。
「ラミネートはあれしか用意してないんじゃよ。」
「え」
「困ったのう…明日は保護者会で親が見にくるというのに…。」
まさかのラミネートの枚数が半分しか用意されていなかったことに俺は驚いたが、有馬じいちゃんはどうやら明日の保護者会のことを懸念しておりとても困っているようだった。
「じゃあ、隣のスーパーの100円ショップで買ってくるよ。」
なんだか有馬じいちゃんが可哀想に見え、もともと自分たちが悪いし…と思い、買いに行くという提案をした。
「本当かい?そりゃ助かるわ〜。」
困った顔がすぐに晴れ、皺だらけの笑顔を俺に向ける。
「堀田に伝えて、生徒手帳持ってすぐ来るよ。」
「ありがとう。」
扉をそっと閉め、小走りで資料室に向かった。
独断で決めてしまったため堀田には申し訳ないが、有馬じいちゃんが困っている姿に俺的には助けてあげたかったし許してくれるだろう。
