「あ、春日のところ行ってもいい?今日無理だって言いにいかなきゃ。」

「はいよ。」

職員室に向かう途中で、堀田がそう言い春日のクラスへと方向を変える。
















「春くんいるかなぁ…あ、春くん!」

クラスを覗いた時、ちょうど掃除をしている春日を見つけ、堀田が大きな声で春日の名前を呼ぶ。

春日も堀田の大きな声に気がつき、ほうきをもちながらこっちに向かって来る。



「2人してどうしたの?」

「あのね、ちょっと色々あって今日居残りしなきゃならなくなっちゃったの…。」

堀田は、すごくションボリしながら言いにくそうに春日に用事を伝える。



「そっか。月斗と?」

「あ、うん…ゲームしたかったぁー!」

「仕方ないよ。また今度ね。」

「はぁーい。」

ムスっとしながら駄々をこねる堀田を宥めるように、春日が「居残り頑張ってね。」と笑顔で堀田の頭を撫でる。

「ほら、行くぞ。またな、春日。」

「うー…」


まだ元気がない堀田を引き連れ、なんとなく後ろを振り向いたら春日が口パクで「がんばれ」と言ってくれた。
俺も口パクで「ありがとう」と返す。

























「有馬じぃちゃん来たよー。」

職員室に着き、扉側に座る有馬じぃちゃんに声をかける。

「来ましたね。では、英語の資料室に向かいましょう。」

早速嫌な予感がし、渋々二人で有馬じいちゃんについていく。





資料室に着いて早々に有馬じいちゃんが用意したのであろう、「やることリスト」を渡され長々と説明が始まった。

「これがやってもらうことです。主に、英語検定の過去の問題プリントの仕分け。それと、中学一年生の子達の初めて英語で文章を書いた絵日記をこのラミネートで挟む。最後に、ここにある資料をこの順番にあそこの棚に入れていってください。」









「有馬先生!」

説明が終わると同時に、バッと隣にいる堀田が挙手をする。

「多いですっ」

いやそれはもうわかっていたことだろと心の中ですぐさまつっこむ。


「僕の授業中にお喋りしているからですよ。さ、とりかかってください。」

静かに今日の出来事を指摘され、そそくさと資料室を出て行く有馬じいちゃん。

そして、その後ろ姿を絶望的な目で追う堀田。







「もう16時半すぎてるから早くしないと18時回るぞ。」

「……………あい。」





もはや諦めたのだろうか。
聞き分けが良くなっていることに安心し、「やることリスト①」から黙々と取り掛かって行った。