部活が終わり、だんだんと寒くなってきた暗い帰り道。
春日と一緒に学校の最寄り駅まで歩く。
「あと4ヶ月くらいしたら高校三年生って早くね。」
「それね。本当にあっという間だ。」
「春日はやっぱり美大に行くのか?」
「そうだね、僕にはそれくらいしか取り柄がないし。」
そう言って自嘲気味に笑う。
「そんなことないだろ。」
「月斗は?」
「俺は推薦かな。」
俺は春日みたいに絵の才能はもちあわせていないし、美大に行くほど絵を描きたいというわけでもない。
成績は中の上って感じなので、推薦で行こうと思っている。
進路の話をしていたらあっという間に駅に着き、改札を抜けてホームで電車を待つ。
すぐに電車は来て、下校時間が被った他の部活の人であろう人たちに流されながら一緒に電車に乗る。
「じゃぁな。」
「また明日。」
20分くらい電車に揺られ、俺は先に降りるが春日はあと二駅乗り続ける。
俺の最寄駅から春日の最寄り駅は二駅しか離れていないため、お互いけっこう家は近い方。
もちろん、春日と幼馴染の堀田もだ。
春日と堀田は同じマンションに小さい頃から住んでいるらしい。
外は暗いため、街灯や最寄り駅にあるショッピングセンターはとても明るい。
俺は、この雰囲気が結構好きだ。
帰り際のサラリーマン、親子が手を繋いで帰る姿、同じように制服を着て放課後を満喫する学生。
少し物思いにふけているところに目の前から見覚えのある人を見つける。
「堀田?」
「月斗」
まさかこんなところで会うとは。
多分、そこのショッピングセンターで買い物をしていたのであろう。
しかし、堀田は一人ではなかった。
「日向くんかしら?久しぶりねー。」
「あ、どうも。」
隣にいたのは、堀田のお母さんだった。
一応、何かしらの学校のイベントでたまに話をすることがあり俺のことは知られている。
「月斗は部活帰りか。あ、じゃあ春日と一緒だった?」
「おう。」
「だって!やっぱり今日一緒にご飯食べようよー。」
「そうねぇ…オムライス作って突撃しましょう!」
「やった、オムライス♡」
春日と夕飯を共にするのだろうか、献立について話し始める堀田親子。
オムライスは春日と堀田の大好物で、2人のお弁当にもよく登場するメニューだ。
「相変わらず、仲が良いですね。」
「そうかしら?なんだか照れちゃうわ〜。日向くんだって、ますますカッコよくなっちゃって!」
「そんなことないっすよ。」
本当に仲の良い家族だと思う。
一人っ子の堀田を大事に思っていることがよくわかる。
「それじゃあ、僕はこれで。」
「家近いんだし、いつでも遊びにきてね。」
「ありがとうございます。」
「また明日ね!月斗!」
そう言って満面の笑みで手を振る堀田。
俺も釣られて少し口角を上げ手を振る。
「じゃあな。」
堀田親子が見えなくなり、俺も自分の帰路に着く。
俺の今日の夕飯はなんだろうか。