「違います!」
市川さんが悲しそうな顔をするから慌てて否定する。
「普段クールな市川さんが笑うと胸がぎゅっとなるんです……」
「ぎゅっと?」
「いつも感情が読み取れないのに笑ってもらうと、今まで知らなかった市川さんの気持ちが見えて私の心を揺さぶるんです」
「それだけですか?」
「それだけです……」
うまく言葉にできない。これではまた市川さんに呆れられてしまう。
「すみません……私、うまく言えないんです……」
「僕もです。昔から感情を出すのは苦手で。言葉も足りませんし……だから女性に振られることも多くて」
「そうなんですか?」
「はい。僕が冷たいのだそうです。一緒に居ても反応が薄くてつまらないと」
確かに市川さんは表情に乏しい。でも私には笑いかけてくれることが多くなったのに。
「わ、私は、市川さんの笑顔をもっと見たいです……」
市川さんは真っ直ぐ私を見つめた。
「僕は宮本さんの前でもっと笑えるようになりたいと思います。できる気がするんです」
「え?」
「僕だってうまく言葉にできないので……」
市川さんはデスクに置いてある1枚の紙を手に取った。
「お願いします」
私の目の前に差し出した紙には大きく『申請書』と書かれている。
「これって……」
『本日付で宮本さんとお付き合いさせていただきたいです。僕の態度で不安な顔をさせないように、宮本さんにとっての王子様を目指したいと思います』
そう記載されている。
「市川さんこれは……」
「表情豊かな宮本さんとお会いするのが楽しかったんです。ずっと」



