「まぁ、昔に比べたら立派に成長してくれたよ」

「あれがぁ?」

上半身裸でもみくちゃになっている翔を、惠子が顎でしめす。

男子が数人でじゃれている。


「香苗。みてみて、グッチ、翔になんかやられてるよ?」

「えぇ~、もうキモイ~」

「あ、本当! 脱がされてんじゃん。かわいそ、グッチ」

「むりむり、キモイ~」

「キモイって、香苗ひどっ。彼氏じゃん。うけるー」

「てか絵梨、そのマスカラ、どこの? 今日、まつげ長くない?」

直実が突然、私の顔を覗き込む。

「マジョ。真理子が前に使ってたやつ」




――騒がしすぎる教室。




「あぁー、いいって言ってたねー」

「ついにパンイチじゃん」

「やだ、もう本当にキモイ~」

「どーすんのかな、真理子」

「いった。まつげ抜けた最悪~」





――騒がしすぎる。





「今日、替えゴム買いにいこ。惠子、前どこで買ったっんだっけ?」

「ダイコク~」

「そーだ。ダイコク寄ってかえろ」

「ちょっと絵梨~、翔なんとかしてよ~」

「えー、無理だって」

「あーもうまじキモイ~」











(やっぱり産みたいかも。ひく?)











真理子のメールを思い出す。










子供なんか産んだって、なんにも教えてあげられないのに。