夜の薄暗い隅っこで

 


「すこし、心が落ち着いてきたよ」


 私が私から剥がれて世界から追い出されようとすると、流星群に乗って夜を跳ぶ夢を見ました。

 細い紐でぶら下げたお月様、星、そのどれもを君くんと手を広げて掴んで笑ったら、大昔にベッドの上で羽毛布団から飛び出して羽まみれになって笑ったあの日を思い出しました。

 ぶら下がる満月に明日の次回予告はないけれど、つらくて切ない今日だからこそ、見えないものも見えてるものも、大切にするべきだ。抱きしめて苦しくて、もうきっと相容れない誰かすら、今は頷いて見守っているだけ。

 生きるなんて大それたことはいい。




 ここにいる。ここにある。それでいい。それだけでいい。

 いま、この世界で、孤独に打ちひしがれてここにいたくないあなたへ、私から言いたいことはひとつだけ。






「君くん」

「なんです、町さん」

「また、会いにきてくれる」

「いつも町さんが会いに来るんでしょう」


 仕様のない人ですね、って笑うから、その夜私はまんまる満月の月面に引っ付いて、ゆりかごのように揺られながら人知れず涙を流しました。

 朝方に流れた空からの雨はきっと、そんな理屈による私の涙かもしれないね。夜のお友だち、光の目をした影たちへ。



 ばいばいを告げて目を開いたら、夜に、遠い場所で光が頷いていました。