「米倉さんってかわいいよね」
えっ、ええええ、えー? かわ、かわいい?
かわいいって言った?
せ、先輩の目おかしいんじゃ……。
「あははっ、ほんとコロコロ表情変わるね」
「…………」
「そーゆーのも含めて可愛いって言ってるんだよ?」
うわあぁ、めまいがしちゃう。
『可愛い』なんて言われ慣れてないから歯がゆくて仕方ない。
そう思ってくれてるのは嬉しいし、少しでも痩せてよかったとも思える。
でもこんなに心がむず痒くなることってあるのだろうか。
「ところで、米倉さん」
「っはい」
「俺の彼女になってくれますか?」
その言葉にギュッと胸が締め付けられた。
好きな人と想いが通じ合うってこんなにも幸せなんだと噛みしめてしまったから。
うんうんと何度も頷く。
視界が歪んでぽろぽろと流れていく涙を葵生先輩が優しく親指で拭ってくれた。
それでも流れる涙に先輩が魔法をかける――涙が一瞬で止まる魔法を――。
「しょっぱいね」なんて笑っていう先輩をただ見入ることしかできなかった。本当に一瞬の出来事だった。
目元に軽く唇が触れた。先輩の唇が。
それだけで全ての時が止まったみたいに思えた。



