話の内容に耳を傾けているとドキッと胸が高鳴った。
だって、今、私の名前……。
そして更に耳を疑った――と、同時に体がドアを刺激して音を立てる。
とっさに身を沈めたけれど、2人の視線がこちらを注目しているのがドア越しに伝ってくるから、観念してドアから身を現した。
「葵生先輩と、恋ちゃん……?」
ふたりはここで何を話してるの?と本当だったら聞くはずだった。
けど、話の内容が“私”だと気付いてしまった以上、何も言えずにそろりと教室に入るしかできなくて。
「米倉さんどうかしたの?」
「や、えー……っと、た、たまたま? 2人を見かけて、」
「そっか。ちょうど良かった。今ね米倉さんのこと話してたんだ」
まるで私がはじめから聞いていたかのように淡々と話す先輩に心臓がバクバクと音を立てる。
「せ、先ぱ――」
「千桜っ」
『さっきの言葉は本当ですか?』そう聞こうとした時、グイッと手を掴んだ恋ちゃんが私を呼ぶ。
苦しそうに歪ませている顔。
なんでそんな顔をするのか分からない私は先輩の方に行こうとするけど、進まないのはまだ手を掴まれているからだ。
「千桜っ、待って、」
「手を離して恋ちゃん」
「っ、俺がいるじゃん。アイツはやめて、俺に――ッ」



