ハツコイぽっちゃり物語


気恥ずかしくてその視線から逃れようと顔を背けると先輩がらしからぬことを言った。


……えっ。


当然のように体が固まるけど、思考だけはなんとか保てている。


いま、なんて……?

私の聞き間違いじゃなかったら今、先輩は、私に、『かわいい』って……。


えっ? カワイイってあのカワイイ?


私に言ったんですか?
太ってる私に?
(こう見えても一応2kg落としました。喜びたいところだけど、まだまだ目標達成はしてません!トホホ……)


いま先輩は私の隣に座って読書をしている。

チラッと盗み見る。

横顔がとても綺麗で見惚れてしまいそうになる。
そこはぐっと堪えて私も本の続きを読み始めた……――。


やけに静かなことに気付いたのはもうすぐ完全下校の予鈴が鳴るころで、室内を見渡すと誰も居なかった。

ついさっきまで人がいたのに、と思いつつ読んでいた本も結構進んでいたことに意外と時間が経ってたんだなと認識する。


そっか、じゃあ今ここに居るのは先輩と私だけか……。

司書の松原さんも職員会議から一向に戻ってくる気配ないし、もうお開きにしてもいいのかな?