「なんか嬉しいことでもあった?」
「え、いや、まあ、……はい。あの。いつから居ました……?」
「今戻って来たところだけど……。なんか嬉しいことでもあったのかなーって。笑ってたからさ」
「私笑ってました!?」
「うん、笑ってた」
私の真似をしているのか前のめりになった先輩がカウンターに肘をついて頬に手を当てる。
眼鏡の奥の目がスっと細められて私を見つめた。
――っ。
なんで今日に限ってまた晴菜ちゃんが居ないんだ、と思う。
『やっぱ葵生先輩、千桜のこと好きだよ』
突然、あの時のちーちゃんの一言が浮かんだ。
先輩が私を好き……?
まさかと思いたいけど、こんなことされたら自惚れちゃいますよ……。



