「お待たせいたしました」
頼んだものが次々と置かれていく度にとてもいい香りに胸を躍らせる。
早速ひとくち、パクリと頬張った。
「ん〜〜っ、おいしー!」
初めて食べたような味わいについ声が大きくなってしまう。
美味しい。本当に美味しい!
なんでこんなに美味しいお店を知っていなかったのかってくらいほんとに美味しい。
ちーちゃんも「うっま!」と言いながらハムスターみたいに頬っぺが膨らんでいる。
そんな彼女に笑って、楽しくお話もしながら食べて、ほっと息をつくと横から突然葵生先輩の声がした。
ふと見上げるとやっぱり先輩で、目が合う。
「美味しかった?」
「っはい!ものすごく美味しかったです。誘ってくれてありがとうございます」
「よかった。渡したかいがあった。あとこれ」
どうぞの声とともに置かれたパンケーキを見つめる。
「これ……」
「俺と店長から特別に」
「えっいいんですか?こんなこと……」
「大丈夫。あとこないだ渡したクーポン今日はいいよ。また来た時に使ってね」
丁寧にお辞儀をした先輩は早々に去っていった。
あ、また言いそびれちゃった。
……というか、ん? どういうこと?
「千桜、たぶん口実だよ。そのクーポン」
「え?」
「ほんとは先輩、千桜に来て欲しかったんじゃない?」
パンケーキを切り分けながら訳の分からないことを言う。
先輩が私に来て欲しかった?
なんで。
誘ってくれたのは意図的ってことを言いたいのかな。ちーちゃん。
「先輩もしかしたら千桜のこと好きなんじゃないの?」



