「な、なんですか……」
「いやぁ、ゾッコンしてんなぁと思って」
「ゾッ!?」
楽しそうに笑うちーちゃんにムッとしていると頼んだドリンクが届けられて、私ははちみつレモン、ちーちゃんはカフェオレを飲む。
口に広がる酸味に口をすぼめ、後からくる甘みにほっと一息をつく。
くるくるとストローを回したちーちゃんが厨房に居るであろう先輩の方に視線を向けて言う。
「なんかさぁ、一段と王子様感上がってなかった?」
「うん上がってた。かっこよすぎて鼻血出そうだった」
「あ、やっぱり?もう半分は出てそうな顔してたもん」
クスクスと笑う彼女に『半分てなんだ』と思いつつ、私はどんな顔で先輩を見ていたのか気になる。
「このお店女性が多いってことは、ほぼほぼ先輩目当てだよね」
「あはは、そうなるよね」
だってこんなにかっこいいんだもん。
来なきゃ損でしょ。
いや、ここの男性店員イケメン率高いんだと思う。中でも葵生先輩がダントツ1位。
レジでお客さんと話している葵生先輩が見える。
分け隔てのない爽やかな笑顔で手を振っている先輩にお客さんも照れながら手を振り返す。
……こんなことされたら照れてしまうのは当然だよね。
私も照れたもん。
初めて一緒に帰った日を思い出すだけでも照れちゃう。
でもあの日は特別に思えた。私だけに笑顔を向けてくれて、手を振ってくれて……。
今日の先輩はなんか遠いな。



