その様子を見て思う。

また、恋ちゃんママと喧嘩したんだな と。


「千桜」

その声で現実へと戻され、近付いてくる人物に目を向ける。


「あ、(れん)ちゃん」


“恋ちゃん”こと、霧山恋(きりやまれん)

私の幼馴染。兼、数少ない男の子の友達。


名前が『恋』だけどちゃんと男の子です。

一応噂では、この学年で一番“イケメン”らしい。

私にとっては普通の男の子なんだけど。

なにより、見た目がかわいいんだよね。

色白で目はパッチリだし、小顔だし、私には無いものを全てお持ちだし。

密かに、恨めしいとも思ってたりしてるのは誰にも内緒。


でも話しやすいのはそんな彼だからかな。


「なあ、帰り千桜ん家寄ってい?」

「うん、いいけど……」

どうかしたの? と聞く間もなく


「わけは後で言うから。とにかくそのまま千桜ん家お邪魔するから」

そう言って先に帰ろうとする背中に、ちーちゃんが言う。


「てかなんで?千桜ん家行くんでしょ。一緒に帰ればいいじゃん」

ちーちゃんが鋭い指摘をする。
それには私も同意見で
透かさず、頷いた。


ピタッと止まった恋ちゃんはチラッと私たちを見て
1歩、2歩、と後ろに下がってきた。


「じゃ、一緒にい?」

私をみて遠慮がちに言った恋ちゃんはなんだか彼らしくない反応に少し違和感を覚えるも

“もちろん”と頷いた。