ハツコイぽっちゃり物語


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紙をめくる音。
時計の針が刻む音。

たまに聞こえるスキャナーがバーコードを認識した音と松原さんの声。


思っていた以上にシャーペンを持つ手が捗ってスマホの時計はあと1分で12時になる頃だった。
よくお腹が鳴らなかったなと安堵する。


続きは家に帰ってからでいいかな。


片付けをしてから松原さんに一言挨拶を済ませて図書室を出ようとドアに手をかけたとき勝手にドアが開かれた。



「――わ、っ」



驚いた拍子に小さく声を出すと向かいの人も同じように声を上げる。


その声になんとなく聞き覚えがある気がしてその人を見上げるとやっぱり聞き覚えのある人だった。


「あ、葵生先輩、!」

「久しぶり米倉さん。今帰り?」

「はい。帰ってまた勉強ですけど……」

「そっか頑張って、って俺もこれからテス勉するんだけどね。……今日は、1人なんだ?」


あはは、と笑う先輩は私以外を探すように見回して首を傾げた。



「1人、ですけど……どうかしたんですか?」


どうしてそんなこと聞くんだろう。


「いや最近よく米倉さんを見かけることが多くてね。いつも誰かと帰ってるから今日は1人なんだなって」