「なに笑ってるの」

「え、別――」


『なんでもない』そう言おうとした時、ふと顔を上げた彼とのあまりの近さに言葉を失った。

恋ちゃんも私も大きく見開く。


時が止まった気がしたのは一瞬で
彼は素早く身を引いてシャーペンをまた何度か回しはじめた。


びっ……くりした。


少し触れた前髪に触れる。
こうでもしてないとドキドキが治まらなそうで。


あんな近くで恋ちゃんを見たのは初めてで、かわいい顔立ちな彼を一瞬かっこいいと思ってしまったけれど、“これは女の子たちに人気なわけだ”と1人で納得する。


「ねえ千桜」


ペンを走らせたまま恋ちゃんが私を呼ぶ。



「少しドキッとした?」

「へ……?」


な、何を聞いてるんだ彼は。
ドキッと?
なんでそんなこと聞くの……?