「千桜ちゃーん」
控えめな声で名前を呼ばれた先には晴菜ちゃんがいた。
こっち来てと手招きをする。
抱えている返却された本たちを元に戻してから彼女がいるカウンターへと向かった。
「どうかしたの?」
と聞いてから目線が下へ向かう。
そこにはたくさんの色画用紙とスパンコール、シールなどが広げられていた。
「わあかわいい。なにか作るの?」
「栞作りだって」
そう言って晴菜ちゃんは後ろの棚から箱を取り出してそれを開ける。
中には10枚の可愛らしい栞があった。
「これ松原さんが作ったみたいなんだけど凄くない!?」
ひとつ手に取ってじっくり見てしまう。
これ職人技だよ。
雪の結晶とかどう作ったの?
これ、切絵だよね。
レベルが高すぎる。
「あ、気に入ったのあったら貰っちゃっていいよ」
柔らかい声に振り向くとこの栞の製作者、松原さんが私たちをみて微笑んでいた。
「これ本当に松原さんが作ったんですか?」
「うん。ちょっとした趣味みたいなもんよ」
趣味だとしてもこの栞の技術は凄いと思う。
手先が器用じゃないから切絵はさすがに出来ないかな。



