どうしよう。先輩が近すぎて息ができない。
呼吸ってどうやってたっけ?
どこに視線を移しても先輩しか目に入らない。
先輩の距離感おかしいよ……。
私の後ろにあるマンガブースが邪魔で仕方ない。
なければもっと距離離せたのに。
「ちょっと失礼」
そう言った先輩の声でうろうろしていた視線がしっかりと捕らえた。
ヒンヤリとしたものがおでこにピッタリくっ付く。
ゆっくり離れていく先輩をただ見つめて
なにが起きたのか整理するためおでこに手を添えて確かめる。
まだほんのりヒンヤリしてる。
「熱は無いね」
よかった、と安心したように頷く葵生先輩は、何事も無かったように本を返却しに来た生徒の相手をしている。
そっか。
熱を確かめるために私のおでこに手を。
…………。
あぁ。ほら、こういうことを自然とする。
だめだよ。こんなのずるい。ずるいですよ先輩。
もっと先輩の近くにいたい、って思っちゃったよ……。



