「――これお願いします」
本日、2人目の貸し出しの声に急いで読んでいた本を閉じる。
全生徒個人の貸し出しバーコードが収納されている重たいファイルを広げ、学年、学籍番号を聞いた。
「3-5の2番」
ペリペリとめくってバーコードを探す。
えー……っと、3-5の2番、2番……っと。
【葵生晴】
そこに書いてあった名前と目の前の人物を交互に見てしまった。
な、なんで気づかなかったんだ私。
普通声で気付くでしょう。
「ごめんね遅くなっちゃって」
「いえ。大丈夫ですよ」
「ははっ。また驚いてる?」
「よく驚くよね米倉さんって」とバーコードにスキャナーをかざした私を見て笑った。
……隠したつもりだったのに。
私ってほんとに分かりやすいんだな。
カウンターに入ってきた先輩が私の隣に座る。
なかなかの距離で思わず身を引きたくなった。
身を引こうと思えば引けるんだけど体が硬直してて上手く椅子を引けない。
ち、ちかい……。
先輩が動くたびに心地いい香りがする。
先輩は普通でいるのに私だけが意識してて、
ちょっとは慣れたはずなのになんでこんな緊張してるんだろう。



