「米倉さん大丈夫?」
「っ!」
声が近いなと思って俯いていたばかりの顔を上げると先輩が私の顔をのぞくように見ていた。
あまりの驚きっぷりに仰け反るとバランスを崩してそのまま後ろに倒れそうになる。
あ、やばい。
しかも、ここ階段っ……まだ下りきってな――!
ぎゅっと目をつぶってこれから加わる痛みを待ち構える。
けど、後ろに倒れるどころか思い切り前に倒れ込むような感覚に襲われた。
――ポスッ
ふわりとやわらかな香りが鼻の奥をくすぐった。
「千桜ちゃん大丈夫!?」
晴菜ちゃんの焦った声に頷くけど
まって。この状況……。
今、私はどうなってる??
がっつり先輩の香りが、する……!
「わあああごめんなさい!!すみません!ありがとうございますすみませんっ」
慌てふためきながら謝る私に先輩は優しく笑って「大丈夫だよ。そんなことより米倉さんは大丈夫?」なんて声をかけてくれる。
やだ。恥ずかしい。熱い。
心配してくれてるのに恥ずかしさで溶けてしまいたい感情に支配された。



