ハツコイぽっちゃり物語


完全下校時間15分前の予鈴がなると「お疲れさま」と松原さんが言う。


……あっという間、だったな。


今日の図書室は人が少ないためほとんど暇で
他にやることもないから読書をしていた。

といっても、図書委員はだいたいこんなもんだと去年やって感じたから別にこの時間が苦だとは思わない。

むしろ大好き。
だってずっと本が読めるんだもの。

この図書室には漫画も揃ってるから退屈しないし。

また、来年もできたら放課後にしたいな……。


「佐波さん米倉さん、今日はお疲れさま」

図書室を出ようとドアに手をかけたところで後ろからの声に2人して振り向く。


「「お疲れさまでした」」

「お、見事声揃ったね。2人は去年もいたよね?」

「先輩知ってたんですか?」

そう聞いたのは晴菜ちゃんだ。


「俺、人の顔覚えるの得意なんだよね」

ちょっと照れくさそうにはにかむ葵生先輩にきゅんと胸が反応する。

「途中まで一緒にいい?」と聞く先輩に私は頷くことしか出来なかったけど、晴菜ちゃんが応えてくれたことで

あ、私に聞いてないから反応する必要無かったのかもしれない、と思うことにした。

……なんだろ。

こういう時の自分って本当に嫌になる。
晴菜ちゃんみたいにコミュニケーション力があったら先輩ともっと話せてたかもしれないのに。


私はなんとなく2人の後ろをついて行くみたいに歩きながらそんな惨めなことを思った。