――そしてついにその日がきた。
金曜日の放課後。
ちーちゃんは「頑張れ」と鼓舞してくれたけど意地悪だ。
こんなにも朝から、なんなら昨日の夜、いや、日付が変わっていく度にドキドキが増して、眠れない日々が続いていたのを知っているのにも関わらず
あんな顔でお見送りされるなんて意地悪にも程があるよ!もう!
はぁぁー。
どうしたらこのドキドキは治まるの。
「千桜ちゃん行こー」
晴菜ちゃんの声に正気を取り戻す。
大丈夫、大丈夫。
そう自分に暗示をかける。
だんだんと近付く図書室に胸を高鳴らせながら扉を開けるとそこには先輩がいなかった。
ほっとしているのも束の間で、パタパタと廊下から足音が聞こえてガラッと開けた人物に目を奪われる。
私の目は勝手に認識して
勝手にフィルターが選択されるシステムが内蔵されてるみたい。
だってこんなにも輝いてみえるなんておかしいもん。
「あ、佐波さんと米倉さん……?」
「佐波、私です」
「は、はい。米倉です」
先輩の口から私の名前が飛び出してきたことに驚きを隠せない。
もう名前を……?
さ、さすがだ。……素敵。
それから先輩はテキパキと指示をする。
私も晴菜ちゃんも図書委員2年目なので指示されたことは難なくこなしていく。
本棚の整理、新書のラベル貼り、カウンターでの受付対応など。
閉館時刻は19時。完全下校と同時刻。
最後まで先輩と一緒に作業ができると思うと嬉しさで舞い上がりそうだ。



