「まだ桜は咲かないね」
「そうですね」
傍にある木には小さな蕾はいくつか見られるものもある。けど、まだ咲きそうにはない。
卒業式と桜っていう印象が強いものだからなんだか物足りなさを感じる。
桜もタイミング見計らって咲くことできないかなぁ、なんて無理難題なことを思う。
「先輩。卒業おめでとうございます」
「ありがとう」
「大学、頑張ってください」
「ありがとう。米倉さんも頑張ってね」
優しく笑う先輩に「はい」と頷く。
すると、珍しく吹き出すみたいに笑うからハテナを浮かべて見つめた。
「米倉さん、今“高校生活”に頑張ってって言ったと思ったでしょ。違うよ。幼馴染くんの事だよ」
「え、あ……へ?」
「あはは。相変わらず面白い反応するね。うん、好きだよ。素直でいいと思う」
「……っ」
これはわざと言っているのだろうか。
それとも天然?
でも本心であることは間違いないと思う。
それが先輩だから。
でも……。
「先輩、“好き”なんて簡単に言うもんじゃないですよ?」
「……え?俺言ってた?」
「え?」
「まじか。ごめん、つい本音が……」
「せ、先輩……」
「ごめん。わかってるんだけど、やっぱまだ忘れそうにないみたい」
あはは、と恥ずかしそうに笑ってるけど、切なそうな表情が垣間見える。
サァーっと春のあたたかな風が私たちの間を通った。



